猫のナンゼンの話

2002年の夏(だったと思う)当時の夫が子猫を拾って帰りました。18年後の2020年5月3日、私のそばで眠るように息を引き取りました。

ナンゼンなんて変な名前でしょう。拾ってきた人が「無門関」の「南泉斬猫(なんせん-ざんみょう)」というお話から冗談で「NANSEN」にしようと言ったので、私が「NANZEN」の方が言いやすいし字面もジグザクしてて面白いとつけた名前です。

それはそれは小さくて可愛らしい子猫だったけど、オドオドしててバランスも悪くて、しかもあちこちでオシッコをするというあまり出来の良い猫とは言えませんでした。
しかも拾った人の愛犬DOGEN(道元 the dog(笑))のベッドで何度もオシッコやウンチしたのである日本当に斬られそうになったのを、私が履いていた草履を頭に乗っけて助けてやったんです。(南泉斬猫ググってください)
少し前に私がアニマルシェルターから貰い受けた猫のエルバちゃんとはなんだかんだ上手く暮らしてくれたのは幸いでした。

それからは本が書けそうな長い話なので省略します。

ここ2年はヨボヨボになり、痩せて肝臓だか腎臓だかも弱り、ピンと誇らしげに立っていた耳も、ある時、水が溜まってそれが萎み、縮んでしまい、決して得意ではなかったトイレもより苦手になり、このところずっとケージに入れ、時々ケージから出して部屋の中で体を伸ばさせていました。

いなくなる3日前からご飯を食べなくなりました。水さえも飲まず。最後にしたオシッコも猫トイレの外でした。
2日前に獣医さんに連れて行くと点滴され、体温が下がっているので血液検査はできないと。いつもと違う鳴き声で泣きました。

いなくなる前日も午前中に点滴。体をお湯を入れたペットボトルで温めてやってください、と言われ、大きなダンボール箱に電気アンカを敷いて、ペットボトルで湯たんぽも作って、ナンゼンを寝かせ、毛布をかけてやりました。

その日は一日中そばに居てやりました。ナンゼンは全く動きません。眠っています。時々撫でてやり、胸が動いているのを確認しました。
体温がだんだん低くなっていきました。
それでも、ペットボトルが緩くなると熱いのに変えてやり、静かに眠るナンゼンのそばにいました。

呼吸が浅くなって行くのがわかりました。
身体もだんだん冷たくなって硬くなっていきました。

そして夕方。ナンゼンはもう息をしていませんでした。

私は電気アンカを切ることも、ペットボトルを抜くこともできずにしばらく一緒にいました。

犬のジョンとマルが待っているので、散歩にいきました。外に出ると虹がかかっていました。
「ナンゼンはあの虹を登って行ったんだな」
そう思いました。

部屋に戻り、硬くなったナンゼンの目を閉じてやりました。
少し泣きました。
そして拾ってきた元夫にメールを送りました。

翌日、火葬にするために、庭の花をつんで箱に入れてやりました。青いパンジーはナンゼンの青い目を思い出させます。
帰りの車に乗った瞬間涙が出ました。

2日後に小さなプラスチックの瓶に入った骨が帰ってきました。
小さな白い骨になったナンゼンは不思議ともう悲しくありません。まるでお伽話に出てくる魔法の骨の様です。
そっと胸に抱いてみました。

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